MTG翻訳したいブログ

金魚(mtggoldfish.com)にある、自分にだけ需要がある記事を翻訳する俺得ブログ

【翻訳】スタンダードの禁止は、特徴か?バグか?(後編)

原文:

www.mtggoldfish.com

禁止のコスト

従来、スタンダードの禁止に対する最大の議論は、消費者の信頼を傷つけることだ。デッキに数百ドルを費しても数週間か数ヶ月で禁止されるだけということは、悪く感じられ、誰かのとってマジックを完全に辞める理由になる可能性さえある。俺は、誕生日のお金を《約束された終末、エムラクール/Emrakul, the Promised End》に使ったが、すぐに合法なデッキが無くなり、他のデッキを買うリソースもない15歳の子から、《約束された終末、エムラクール/Emrakul, the Promised End》が禁止になった後メールをもらったことを覚えている。これは、確かに若いプレイヤーにこのゲームを愛して楽しんでもらうには、優れた方法ではない。デッキを構築するのに、時間、お金、感情を投じても禁止されるのを見るだけという悪く感じる側面は、回避する方法はないが、最近のデータのいくつかは、スタンダードで禁止されたカードの経済的な影響は、実際はそれほど悪くないことを示唆している。

イオニア、モダン、統率者のような非スタンダードの人気のおかげで、最終的にスタンダードで禁止になるカードを買うことは、常に経済的な災厄になるとは限らない。たとえば、《死者の原野/Field of the Dead》を取り上げてみよう。10月21日、《死者の原野/Field of the Dead》がスタンダードで禁止されたときは $5.10 だった。今日では、マジックの構築フォーマットでは非合法であるにも関わらず、$11 を超えている。スタンダードで禁止されていても、《死者の原野/Field of the Dead》の価格を傷つけていない。代わりに、モダン、パイオニア、それほどでもないが統率者でたくさんプレイされているおかげで、禁止された月より価格は2倍になった。

同じ奇妙な傾向が、《王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns》でも当てはまっている。このプレインズウォーカーはスタンダードにいた時代、《死者の原野/Field of the Dead》の禁止とパイオニアのアナウンスによって短期間で約 $70 になるまで、$35~$40 の価格帯を推移していた。その後、禁止が予想されて $30 近くまで下がり、公式に禁止される直前では $31.90 の安値になった。しかしながら、禁止されてからほんの数日で、このプレインズウォーカーは $10 以上跳ね上がり、$40 半ばの範囲にまで戻った。

ウィザーズが Play Design の記事でオーコと禁止について言及したことの1つには、ウィザードが意図的にスタンダード合法のセットで非スタンダードのフォーマット(統率者、モダン、レガシー、パイオニア)用のカードをデザインしようとしていることだ。《死者の原野/Field of the Dead》と《王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns》のようなカードが、ほかのフォーマットでたくさんプレイされているという事実は、少なくとも純粋に経済的な観点からは、スタンダードにおける禁止に対する打撃を大きく和らげている。これは、コストが掛からないと言っている訳ではない。禁止されたデッキを売却したり交換したりする時間と労力が必要だ。禁止されたカードと共にプレイされていたほかのカードも、価格が下がる可能性がある(《死者の原野/Field of the Dead》が禁止された後、《不屈の巡礼者、ゴロス/Golos, Tireless Pilgrim》は $6 から $3 になった)。そして、すべてのカードがオーコや《死者の原野/Field of the Dead》という訳ではない(スタンダードとパイオニアで禁止された《夏の帳/Veil of Summer》は、$8 から $5 に下がった)。とはいえ、最近の経験に基づくと、プレイヤーはデッキが禁止されたときに必ずしも意味のある金額を失うわけではなく、奇妙なことに、少なくともいくつかのケースで経済的に利益を得るかもしれない。

禁止のもう1つの重要な側面は、紙の統率者製品、Command Fest、Magic FestのCommand Zone、グランプリのメインイベント(通常はスタンダードかモダン)への出席者の減少、コレクターブースターでの約100万の特別なカードと、Hasbro が Mythic Invitationals、ミシックチャンピオンシップ、印象的な配信とサードパーティのトーナメントのようなさまざまな形態の広告に投入した膨大な現金といった、2019年の Arena の成長だ。過去数年に渡った多くのアナウンスと変更を基にすると、ウィザーズの計画はある種、スタンダードは Arena に注力し、卓上プレイでは、統率者、パイオニア、モダンのようなフォーマットに注力しているようだ。

ウィザーズの目標が、次の数年に渡ってスタンダードをより Arena へ向かわせることなら、Arena のカードは安く(ゲームのプレイに費やす時間を差し引けば、無料でさえある)、ウィザーズは最終的に禁止されるカードについてワイルドカードでプレイヤーに弁償することができる。さらに、他のデジタルカードゲームから来た多くの新しい Arena のプレイヤーは、禁止はありふれたことだ(ナーフという形だが、競技的な観点でカードが高い位置でプレイアブルからアンプレイアブルになり、技術的には大抵同じ効果があるので禁止と変わらない)。過去1週間に渡る Arena に関する redditサブフォーラムでの反応を基にすると、最近の禁止は、恐れられているというよりも、歓迎されている。紙で $50 のカードが禁止になることは恐ろしいことだが、価格が上がるにせよ下がるにせよ、Arena では経済がどう設計されているかという理由で、出資はかなり小さくなる。

これはすべて、スタンダードでカードを禁止するコストがないと示唆しているわけではない。たしかに消費者の信頼を失うことにはコストがあるし、禁止があまりにもありふれたものであるなら、おそらく人々はカードを買う枚数が少なくなりさえするだろう。しかしながら、マジック市場の現実的な経済の変化と、ウィザーズがスタンダードは Arena に注力していることから、2019年のスタンダードの、カードの禁止のコストは、2011年や2014年の頃よりずっと小さい。

禁止の利点(の可能性)

スタンダードが直面する最大の課題には、フォーマットにあるカードにはほとんど関係なく、しばらくすると古くなることだ。夏までメタゲームは典型的には解決され、プレイヤーはローテーションで物事がかき回されるまで待っている間、大抵ほかのフォーマットに注力する。それほど遠くない昔に、ウィザーズはスタンダードを一年中新鮮に保つために、1年に1回のローテーションを2回にすることで、この問題の解決を試みようとした。しかし方針を翻した(この残念な試みは、非常に闇の期間であるカラディシュのスタンダードだったと言及する価値はあるが)。

この問題を解決する非常に簡単な方法は、最終的に予想されるより若干良くなるカードは、おそらく禁止にする必要があるという知識でもって、高パワーなスタンダードのセットを刷ることだ。高パワーなスタンダードのセットは、それ自体でスタンダードが変わる可能性があるだけではなく、特に最近見てきたようにトップデッキがメタゲームの 40% や 70% にさえなるフォーマットでは、禁止はフォーマットからトップデッキを除去し、マンネリ化し解決されたフォーマットに新しい命を吹き込む可能性があることで、この役割をうまく果たす。この計画は、禁止になりうる壊れたカードをするべきだ、と言っているわけではない。しかし過去3年間を信じるなら、禁止は起こるだろう。だから禁止のコストに注力するのではなく、多分利点に注力すべきなのかもしれない。

ほぼ間違いなく、オーコのあったスタンダードの問題は、オーコ(と《むかしむかし/Once Upon a Time》と《夏の帳/Veil of Summer》)は禁止される必要はあったことではなく、問題のカードを禁止するのに時間が掛かりすぎて、プレイヤーが最低の多様性だったミシックチャンピオンシップを過ごさなければならなかったことだ。もしソーシャルメディアを信じられるならば、多くのプレイヤーはフォーマットが変わるのを待っている間、単純にスタンダードをプレイするのを止めていた。

去年を振り返ってみてくれ。《運命のきずな/Nexus of Fate》が無いスタンダードは良かっただろうか? 《ドミナリアの英雄、テフェリー/Teferi, Hero of Dominaria》が無かったら? 《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》は? それと、数年前はどうだった? スタンダードの夏が解決されるまで、プレイヤーが退屈な時が通り過ぎるのをじっとしている(あるいは多分出ていくかも)より、《先祖の結集/Rally the Ancestors》や《集合した中隊/Collected Company》が禁止になっていたら、スタンダードはもっと楽しかっただろうか? 俺は、以前議論したときは疑いようもなくコストがあったが、禁止のコストが大半の人々が考えているほど高くないと考えている。逆に、Magic Arena の Raddit に毎ポスト《運命のきずな/Nexus of Fate》について文句を言う投稿がある6か月間を費やすコストもある。新規プレイヤーが Arena を起動し、《ドミナリアの英雄、テフェリー/Teferi, Hero of Dominaria》が自分のパーマネントをすべて追放し、テフェリーのコントローラーがテフェリー自体をライブラリに押し込み、マジックが(大抵)素晴らしいゲームを体験する機会を得る前に、マジックをあきらめる可能性があるコストもある。多分、スタンダードの問題は禁止があることではない。十分な回数禁止が無いことだ。

最近、ウィザーズはパイオニアを発表した。これは、即座にすばらしい成功を収めたようだ。このフォーマットの突拍子もないことの1つには、当面の間、毎週禁止改定のアナウンスがあることだ。そしてこれまでのところ、たった3週間で2回の禁止があった。ウィザーズは、パイオニアは 2020年には残りのフォーマットと共に通常の禁止改定にすると言っているが、多分残りのフォーマットをパイオニアの禁止改定スケジュールにするアイデアのほうが良いかもしれない。

ウィザーズが強力なカードを刷れるが、問題のあるカードをすばやく削除できるフォーマットは、とても楽しそうにみえる。(繰り返すが、ウィザーズは禁止になるカードを意図的に刷ろうとすべきではないし、してはならないことを明確にしておく。しかし目標が、非スタンダードでプレイされるくらい優れたカードがある非常に強力なスタンダードのセットを刷ることで、カードが強力なものから禁止になりうる問題のあるものになるということに、大きな間違いはない。)スタンダードは、少なくてもほとんどどんな時でも変わる可能性があるべきだろう。

俺は数年前の夏、《集合した中隊/Collected Company》がスタンダードからローテーションされる直前のことを覚えている。俺は基本的にスタンダードを見たりプレイしたりすることを止めていた。そのときのフォーマットは「70% のデッキがオーコ」という意味では壊れてなかったが、30%~35%くらいは《集合した中隊/Collected Company》で、それが1年近くあった。単純にもう興味が無くなっていた。禁止がもっと受け入れられている世界では、《集合した中隊/Collected Company》がローテーションされ、再びスタンダードを楽しむことができるまで、日付を数えるよりも、単純にローテーション1~2か月前に禁止し、マジックを再び楽しむことができた。新しいデッキとアーキタイプは、ローテーションで1回だけではなく、スタンダードは1年で複数回変わりそうなので、定期的に成功するチャンスがある。ミシックチャンピオンシップは、同じことを繰り返し繰り返し何度も何百万回同じデッキを白目をむいて見るより、実際に驚くデッキがブレークするチャンスがあるかもしれないので、再び興味深いものになる。

もちろん、この計画にはリスクがないわけではない。スタンダードの歴史で禁止がまれであった理由の一部には、スタンダードの歴史のほとんどで、プレイヤーが禁止を強く嫌っていたからだ。おそらく、プレイヤーは投資を失うことを心配するので、カードをより少なく買うことになるだろう。その結果、たぶん卓上のスタンダードをプレイする人は少なくなるかもしれない。逆に、ウィザードが過去のどの時点よりもスタンダードでカードを禁止することに対してよりオープンであるように見える理由の一部には、多分スタンダードは Arena へ移動するほうがずっと好ましいからだろう。Arena は禁止がはるかに問題ではなく、ほかのデジタル・カードゲームから来たプレイヤーは、ナーフでフォーマットが変更することに慣れているからだ。

このアイデアが、Arena でスタンダードをサポートしながら、パイオニア、モダン、統率者を紙でサポートすることなら、どうだろうか? もしモダンで《王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns》が欲しかったり統率者で《グレートヘンジ/The Great Henge》が欲しくて、エルドレインの王権のパックを買うなら、そのカードが最終的にスタンダードで禁止になることを気にするだろうか? あるいは、最近の禁止を見てきた通り、Arena では、プレイヤーに禁止カードを返済するのがとても簡単なので、スタンダードの禁止が歯ぎしりすることではなく、一般的にフォーマットの新鮮さにわくわくする経験となっている。

まとめ

俺は、今日提案したことが正しいと言ってはいない。伝統的に長い間禁止をネットのネガティブでデザインの失敗としてみてきたマジックのプレイヤーとしては、禁止がバグではなくスタンダードの特徴と考えることを奇妙に感じている。そして、俺は間違っていて、2019年であっても、スタンダードでカードを禁止しなければならないことは、ゲーム全体に大して有害である可能性は非常にありうる。

とはいえ、我々は、人々が毎セットに強力なカードを望み、ウィザードが各セットに非常に強力なカードを印刷したいという世界にいる。我々は、スタンダードを新鮮で楽しいものにすることが、Arena の成功にとって非常に重要な世界にいる。我々は、コンテンツ、配信、ミシックチャンピオンシップのせいで、マジックが以前よりかつてないほど速く動く世界にいる。多分、本当に多分だが、この新しいマジックの世界は、禁止のコストについていらいらして時間を費やしたり禁止をバグと考えるのではなく、奇妙な2019年の新世界にフォーマットとゲームを成功に導く、規則的なスタンダードの禁止の利点として熱く受け入れるべきなのかもしれない。

 (おわり)