【翻訳】ドミナリアの過小評価と過大評価(後編)
原文
過小評価:《菌類感染/Fungal Infection》
《菌類感染/Fungal Infection》は、おそらくたくさんのことをしないように見えるだろう。しかし実はコモンというレアリティと低マナコストに反して、たくさんの力が隠されている。このカードは、何かカードを1枚引く代わりに 1/1 苗木を常に引くことを除いて、かつてのスタンダードの定番であった《コショウ煙/Peppersmoke》に非常に良く似ている。対戦相手と1対2交換をするたくさんの潜在能力を持った、1マナの除去呪文である。
もし《菌類感染/Fungal Infection》をどうプレイするか考えているなら、このカードはもっと柔軟な(だが、リスクが高い)《見栄え損ない/Disfigure》に似ている。常にタフネス1のクリーチャーを倒せるが、ちょっとした幸運とうまく動かすとで、攻撃クリーチャーに -1/-1 してすぐに 1/1 苗木トークンでブロックすることにより、タフネス2のクリーチャーと交換するのに使うことができる。スタンダードで現在一番良くプレイされているトップ5のクリーチャーは、《歩行バリスタ/Walking Ballista》、《ボーマットの急使/Bomat Courier》、《機知の勇者/Champion of Wits》、《光袖会の収集者/Glint-Sleeve Siphoner》、《翡翠光のレインジャー/Jadelight Ranger》で、《菌類感染/Fungal Infection》はこれら全部を倒し(どれだけマナを費やすかに依るので、《歩行バリスタ/Walking Ballista》は例外になりうる)、かつ 1/1 トークンが残せることを考えると、このカードは非常に強く、サイドボードの枠と、可能ならメインでもプレイされる価値がきっとあるように見える。
そして《菌類感染/Fungal Infection》の他の長所はまだ上げていない。まず、1対2交換できる可能性はもっと素晴らしいことをするので、赤単アグロに対してとても素晴らしい。攻撃してくる《地揺すりのケンラ/Earthshaker Khenra》を倒すのと、《ボーマットの急使/Bomat Courier》をブロックするようなことができる。このことは、たった1マナでゲーム全体の流れを変えるかもしれない境目になる。つぎに、トークンが苗木であることには注意せず《菌類感染/Fungal Infection》を使うことについて話し続けてきたが、もし機能的な苗木部族デッキを構築できるなら、このカードはもっと良くなる。多分こんな感じになるだろう。
部族:苗木
メイン
4 《胞子の大群/Spore Swarm》
2 《喪心/Cast Down》
3 《致命的な一押し/Fatal Push》
4 《菌類感染/Fungal Infection》
3 《ヴラスカの侮辱/Vraska's Contempt》
2 《菌類の勢力範囲/Fungal Plots》
4 《若葉のドライアド/Tendershoot Dryad》
4 《胞子冠サリッド/Sporecrown Thallid》
4 《ヤヴィマヤの苗飼い/Yavimaya Sapherd》
4 《苗木の移牧/Saproling Migration》
3 《密航者、スライムフット/Slimefoot, the Stowaway》
1 《ハシェプのオアシス/Hashep Oasis》
1 《イフニルの死界/Ifnir Deadlands》
1 《屍肉あさりの地/Scavenger Grounds》
4 《森林の墓地/Woodland Cemetery》
4 《穢れた果樹園/Foul Orchard》
4 《花盛りの湿地/Blooming Marsh》
3 《森/Forest》
5 《沼/Swamp》
サイドボード
2 《霊気圏の収集艇/Aethersphere Harvester》
2 《アルゲールの断血/Arguel's Blood Fast》
2 《大災厄/Doomfall》
4 《強迫/Duress》
2 《渇望の時/Moment of Craving》
2 《帰化/Naturalize》
1 《ヴラスカの侮辱/Vraska's Contempt》
過大評価:伝説のソーサリー
大半の伝説のソーサリーは効果に対してマナ・レシオが良いが、文字通り悪くなっているときに唱えられないカードをプレイすることはリスクが高い戦略であり、トーナメントのプレイを見る限りでは、伝説のソーサリー全部を傍らに残しておくことになるかもしれない。例えば《ウルザの殲滅破/Urza's Ruinous Blast》を取り上げてみよう。《神の怒り/Wrath of God》をプレイする全理由は、物事がうまく行っていないときにクリーチャーの大群から身を守ることができるからである。しかし伝説のクリーチャーかプレインズウォーカーが唱えるために戦場にある必要があるという事実は、手札に唱えられない全体除去を手札に詰まらせて、適当なクリーチャーで殴られて倒される自分を見つめている状況であるということである。
この問題を克服するただ一つの方法は、単純に伝説と伝説のソーサリーを同じターンに唱えることであるだろう。しかしこのサイクルは全部高コスト(最低でも5マナで X 呪文のために潜在的にはもっと高い)だから、とても難しい。たとえ2マナの伝説のクリーチャーがあっても、同じターンに伝説のソーサリーも唱えるには7マナ必要である。そして一番良い伝説のクリーチャーとプレインズウォーカーの多くは4、5、6マナであり、非常に非常に遅いゲームでないと同じターンに2枚のカードを唱えることはほとんど不可能ということになる。
良い知らせは、伝説のソーサリーはすべて強力で、多分大量の伝説のクリーチャーとプレインズウォーカーをプレイする構築では十分強力だと思う。伝説のソーサリーを過大評価のリストに入れたのは、プレイアブルではないという意味ではない。いくらか注意深くデッキを構築することでうまく働かせることができるし、伝説のソーサリーは超素敵なので俺は大半が試されるだろうと思っている。代わりに「過大評価」というラベルは、たくさんのプレイヤーがデッキに伝説を十分プレイできないせいで、伝説のソーサリーを手札に詰まらせているのを、少なくてもドミナリアのスタンダードの初期には、見ることになるだろうという事実から来ている。
そういう訳で、伝説のソーサリーを働かせるには、何枚の伝説をプレイすれば十分か? いくつかの数値は説明するのが難しい(伝説のクリーチャーがどのくらい戦場に着地してどのくらい倒されてしまうのか、のような)ので、実はこれは本当に難しい問題だ。10 枚の伝説のクリーチャーとプレインズウォーカーがデッキにあると、15 枚のドロー(先手・後手にも依るが、大体7~8ターン)では 95% の確率で1枚以上引けて、78% の確率で2枚以上引けるが、3枚以上は 50% 未満である。つまり、もし対戦相手が2体の伝説に対処できてしまうと(これは非常に起こりうるように見える)、おそらく伝説のソーサリーが手札で詰まってしまうだろう。逆に伝説の枚数を 15 枚に増やすことができると、15 枚のドローで 80% の確率で3枚以上引け、4枚以上は約 55% であり、除去に対抗するのは十分かもしれない(まだリスクが無いわけではない、特に除去が多い対戦では)。
問題は、スタンダードに少なくても(同じ伝説をたくさん入れすぎて、死にドローのせいで負けることが無いように) 15 枚の伝説を入れることができるデッキが実際あるかどうかである。典型的なデッキでは約35枚の土地以外のカードと、少なくても8~10枚の呪文枠(潜在的に伝説のソーサリー自体のための枠になる)では、土地以外のパーマネントの半分以上は伝説である必要があるということになる。これは乗り越えるにはとても高い基準のように見える。多分誰かがデッキを働かせる伝説と伝説のソーサリーの正しい構成を見つけることになる。しかし、数学はトリッキーで難しく、今はサイクル全体は過大評価の山に残しておこう。
過小評価:目に入ったカード
- 《祖神の使徒、テシャール/Teshar, Ancestor's Apostle》はコンボの可能性で溢れている。どんなコンボであっても実際トーナメントのシーンで起こる確率はおそらくとても低いだろうが、俺がシナリオを構築できるドミナリアで唯一のカードだ。この潜在能力だけで過小評価にしている。
- 良いかは分からないが、《森の目覚め/Sylvan Awakening》と《スランの崩落/Fall of the Thran》を同じターンに唱える日が来るだろうし、それはすごく素晴らしいだろう。《スランの崩落/Fall of the Thran》について言うと、まだ俺が全セットの中で一番わくわくしているカードだ。安全な《ハルマゲドン/Armageddon》であるが、それでもまだ《ハルマゲドン/Armageddon》であり、スタンダードに長い長い間なかったカードだ。
- 《リッチの熟達/Lich's Mastery》は、このカードでカードを引き、それによってゲームに負けることが無くなる。つまり追加のカードを引いて生き残ることになる。マジックのカードの他に欲しいものは何? 真面目に言うと、今のフォーマットでこのカードをプレイしてぶっ飛ばされる手段は、多すぎる程無い(《川の叱責/River's Rebuke》と《啓示の刻/Hour of Revelation》は主な問題となるが、両方ともたくさんプレイはされていない)。そして何ターンか戦場に置き続けることができるなら、生み出されるカードアドバンテージでゲームに勝てることを考えると、このカードは Against the Odds で取り上げるよりも価値がある可能性があるし、「現実的な」デッキで見られるかもしれない。
過大評価:目に入ったカード
- 《モックス・アンバー/Mox Amber》は刷られたモックスの中で圧倒的に最悪だ。まだ特定のデッキでは潜在能力があるかもしれないが、《祖神の使徒、テシャール/Teshar, Ancestor's Apostle》のような何かでループさせるある種のコンボ以外では、スタンダードで使うのは特に難しいように見える。このカードが現在《ウルザの後継、カーン/Karn, Scion of Urza》に続いて2番目に高額なカードであることを考えると、過大評価と言っておくのが安全であるように見える。
- 《不死身、スクイー/Squee, the Immortal》は、《食物連鎖/Food Chain》や《血清の粉末/Serum Powder》のコンボ以外ではとても悪い。墓地(と追放領域)から戻ってくることは永遠に素晴らしいが、問題は 2/1 しか得られないのに毎回3マナ払わなければならないことだ。《恐血鬼/Bloodghast》が墓地から毎ターンただで 2/1 で戻ってくることを考えると、《排斥/Cast Out》や《流刑への道/Path to Exile》を倒せるという長所は、コスト分の価値に見合わない。毎ターン 2/1 のために3マナを払うことは、マジックというゲームに勝つ方法のようにはあまり見えない。
- 《多勢の兜/Helm of the Host》は俺が気に入っているカードで、Against the Odds を素敵な話にし、本当に楽しい統率者デッキのための根幹となるカードではあるが、競技デッキという観点で見る限りでは、プレイアブルではないと強く確信している。《戦闘の祝賀者/Combat Celebrant》で無限戦闘フェーズに突入し、盤面に《戦闘の祝賀者/Combat Celebrant》を満たすのは楽しそうに聞こえるが、もし対戦相手が単に君にこのカードを唱えさせた後、このカードを破壊するか装備したクリーチャーに対応すれば、《多勢の兜/Helm of the Host》は結局2倍の《Time Walk》を自分にすることになる。
(おわり)